ハルさんにその話をしたことがなかったのは、そうするとまるでそれらが欲しいとねだっているように聞こえるのではないかと思ったからだ。
聞かれた時には、ジュエリーなんて別に興味無い、“ICHIGAYA”も有名だから聞いたことがあるぐらいだと言っていたのに。
「……それはそうと、こんな高価なもの受け取るわけにはいきません」
私は失言を誤魔化すように言う。幸いハルさんもあまり気にしている様子ではなかった。
「付き合って一ヶ月記念のプレゼントってことでどう?」
「多分これ三年とか四年記念でも高いぐらいですよ」
「まあまあ細かいことは気にしない。夏怜ちゃんに付けて欲しいんだよ」
ネックレスを外そうとすると、すぐに手を押えられて止められる。
普段から使うには高価すぎて不安だ。だが、嬉しくないはずがない。
「なら……。ありがとうございます。すごく嬉しいです」
「大人っぽいクールな雰囲気の中に、きらきらした可愛らしい面を持ち合わせている。まさに夏怜ちゃんって感じのデザインでしょ」
あくまで私のイメージという設定で通すのか。というか私はハルさんの中でそんなイメージなんだ。きらきらした可愛らしい面というのは自分ではわからない。
ハルさんは満足したように自分の席に戻り、インスタントのコーヒーを飲みながら言った。
「そのデザイン結構好評でね。また新作のデザインを考えてくれって言われてるんだよ。それを最近遅くまで考えてるってわけ」
「なるほど。こういうのってプロのデザイナーが考えるものじゃないんですか?」
「普通はそうだけど、僕がこういうのが好きで、副社長権限で関わらせてもらってる。あ、でも僕が出した案は今までほとんど通ってないけど。夏怜ちゃんにあげたそれは本当に例外」