ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。



 このまま夏怜はここに帰ってこないだろうか。嫌だな、それは。


「あれ、そういえば……」


 晴仁は昨日のことを考えているうちに、夏怜が気になることを言っていたのを思い出した。長谷に告白されたんだという話があまりに衝撃で忘れかけていた。


『昨日の夜、澪さんに会いに行っていたんですよね?』


 一昨日の夜、澪とある理由で久々に会っていたのは事実だった。

 どうして夏怜がそれを知っていたのかがわからない。


「……もしかして」


 晴仁は一つの可能性に思い当って、食べかけのサンドイッチを口に押し込み、ケータイを取り出した。

 口の中のものを飲み込みながら、通話履歴から目的の名前を探す。

 発信ボタンを押すと、コール音が三回ぐらい鳴った後、相手の声が聞こえる。


「あ、もしもし。一昨日会ったばっかなのにごめんね。少し聞きたいことがあるんだけど、今いいかな、澪」


 電話の向こうで、元婚約者が「大丈夫ですよ」と明るく答える声がした。