ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。



 私はしばらく頭を悩ませてから、あっと声を上げた。


「和柄なんてどうですか?」

「和柄?」

「はい。例えば私が着ている着物の柄は、『七宝文』っていうんです」


 着物に入った、丸をいくつも組み合わせたような柄を指差して言う。

 円満や調和といった意味が込められている、縁起の良い柄だ。


「和柄は他にも、麻の葉模様とか籠目柄とか、色々あります。それぞれ縁起の良い柄だし、モチーフにできませんかね」

「へえ、なるほどな。確かにすごく可愛い。指輪にその模様を付けたりはできるかもしれないな……」

「細かくて繊細な柄はシルバーアクセサリーと相性が良いかもしれません」

「アクセント程度に柄を入れて、宝石も主張しすぎないようにあしらう……。考えてみる価値はあるかも」

「ネックレスもプレートのネックレスなら柄を彫れるんじゃないでしょうか」

「うんうん」


 ハルさんは出てきた案をどんどんケータイにメモしていく。

 話し合いが白熱した結果、一時間ぐらいで帰る予定だったはずが、神社にいる間だけで二時間は経っていた。

 ハルさんは大きく背伸びして、すがすがしい表情で笑った。


「ありがとう。この方向で考えてみるよ」

「はい。ちょっとワクワクします」

「さあ、そろそろ戻ろうか。寒くなってきたし」


 ハルさんは立ち上がって、私に手を差し出す。
 その手に自分の手をとると、彼は「わっ」と驚いた声を上げた。


「すごい冷えてる。ごめんね、時間忘れて話し込んでたんだね」

「いえ。手は冷えやすい体質なので」

「そう?」


 ハルさんはちらりと私を見て、いたずらっぽい笑みを浮かべる。少し嫌な予感がした瞬間、彼は私の手の甲にそっと唇を押し当てた。