ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。



「せっかく着替えたんなら、夏怜と市ヶ谷さん二人でそのまま散歩でもしてきたらいいんじゃね?」


 え、という私の声を遮り、母さんが「良いじゃない!」と賛成する。


「クリスマスイブに着物デートなんて乙じゃない。行ってきなさいよ」

「でも……」


 ハルさんに目を向けると、彼は微笑んでうなずく。


「夏怜ちゃんが嫌じゃなければ、ぜひ。この辺りをもっと案内して欲しいな」

「わかりました」


 彼が乗り気ならば断る理由もない。

 私はケータイと財布だけ入る小さな着物用のバッグを持って、ハルさんと外に出た。

 冬用の暖かい足袋や肌着を身につけていても、冷たい風が吹けばかなり寒い。


「どこに行くの?」


 ハルさんに問われ、私は少し考えてから答える。


「近くにある神社とかどうですか?」

「神社があるんだ。初詣は一緒に行けないし良いかも」

「商店街の中を散策してもいいんですけど、下駄に慣れていないなら歩きにくいでしょうし」


 目的の神社は、商店街から少し外れたところにある。観光地でも何でもないのだが、趣のあるそこそこ立派なところだ。初詣の時期は近所の人たちで混み合っているが、何もないときは閑散としている。

 それにしても……と私は隣を歩くハルさんを見る。
 いくら何でもかっこよすぎないだろうか。もう隣に並んで歩いていることさえ恐れ多い気がしてきた。

 頭部から足の先までじっと観察していると、ハルさんが堪えきれなくなったというように笑い声をあげた。


「あははは……夏怜ちゃん、そんなまじまじと見つめられるとちょっと恥ずかしいな」


 いけない。初めはこっそり見ていたつもりだったのに、いつの間にか視線に気づかれるほどじろじろと……。
 私は「すみません」と素直に謝り前を向く。