ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。



 私はそっと売場をのぞいて驚いた。


「え、ハルさん……何で着物を……?」


 椅子に腰かけ、兄さんとしゃべっているハルさんが、薄茶色の上品な着物を着ていた。

 私の声に気が付いた彼が振り向く。


「待ってたよ夏怜ちゃん……あれ、夏怜ちゃんも着物になってる」

「さっき着替えたんです」


 答えながら、私は着物姿の彼を目に焼き付けるように見つめる。

 彼の持つ気品と顔の良さが、着物によってぐんと引き立ち、その上くらりとするような色気が滲み出ている。落ち着いた雰囲気の中に浮かべられた微笑は、直視して良いものかどうかと迷わされるほどに魅力的だ。

 要するにかっこいい。めちゃくちゃかっこいい。


「冬弥くんに着付けてもらったんだ。似合うかな?」


 はにかんだように問いかけられ、私はこくこくと何度もうなずいた。

 ハルさんは嬉しそうに笑った後、「でもなぁ」と呟く。


「結局僕はドキドキさせられる側なのかな」

「え?」

「夏怜ちゃんの着物姿、すごく可愛い」

「そうですか……?」


 そのやり取りを見ていた母さんが、「ちょっと!」と私の背中を叩いた。


「そこは『ありがとうございます。でもハルさんの方がかっこいいですよ』って言うところでしょ」

「……髪飾り選ばなきゃ」

「こら逃げない」


 そんなコミュニケーション上級者みたいな返しを私に求めないでくれ。

 私は頬が熱を持つのを感じながら髪飾りのコーナーに行く。売れ筋から外れていそうな、地味目の青い造花の付いた飾りを選んだ。値段も比較的安めだし、ちょうど良い。

 選んだ飾りを母さんに付けてもらっていると、兄さんが目を逸らしながら言ってきた。