ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。




「先ほど言った四種類の系統の色を一つずつ持ってきたんで、とりあえずこの中から好きな色や似合いそうな色を選んで」


 促されるままに、晴仁は色や柄を選んでいく。最終的に決めたのは、無地で薄茶色のものだった。

 帯や長襦袢などの小物も選び、着付けを始める。


「羽織も買っていってくださいね。どうせ金はあるんでしょう副社長サン」


 着物を着付けながら、冬弥はは嫌味たっぷりの口調で言う。

 晴仁は苦笑してうなずいた。


「そうします。あと一応言っておきますけど、名乗った身分に噓偽りはありませんよ」

「……わかってる。さっきネットで調べたら確かにあんたの顔写真あったし」

「それから身体目当てで夏怜ちゃんに言い寄ったわけでもないので」

「そうかよ」

「彼女のことを本当に大事にしてますね」

「まあたった一人の妹だしな」


 晴仁には兄弟がいないが、妹というのはやはり大切にしたくなるものなのだろうか。

 晴仁は以前夏怜から聞いた話を思い出して冬弥に尋ねた。


「冬弥さんは陸上の選手だったらしいですね」

「は?」

「大学生の時に怪我をするまで。夏怜ちゃんが話していました」

「へえ、夏怜がオレの話をねえ」


 冬弥は意外そうに目を見開いた。


「どうせ面倒な兄がいるとかいう話だな」


 晴仁が何か答える前に、冬弥は「なあ」と言って手を止めた。


「夏怜が今の大学に行った理由、あんたは知ってるのか?」


 晴仁は、冬弥が先ほど怒って部屋を出て行った夏怜の言っていたことを気にしているんだと気が付く。

 そのことについては前に聞いている。
 昔から自分が継ぐつもりでいた家業を、兄の冬弥が継ぐことになった。それでも好きな和服に関わりたいと考え、デザインの面から携わるため服飾系の大学を選んだと言っていた。