「素敵ねぇ。でも副社長さんなんて忙しいでしょ?この子も大学に行ってないときはバイトばっかりしてるらしいし、デートしてる暇とかもないんじゃないの?」
「ああ、それは……」
今まで余裕をもって流暢に話していたハルさんが、母さんの問いかけに口を濁した。
彼は視線だけ隣の私に向ける。私は彼の目を見返して小さくうなずいた。
「一緒に過ごす時間はとれています。というのも実は今、僕のマンションで夏怜さんと一緒に暮らしているんです」
私たちの向かいの三人が、一瞬ぽかんとした表情をする。
最初に反応したのは兄さんだった。
「おいおい夏怜。本当なのか?」
「うん」
「何やってんだよ!オレは認めないぞ!?」
「別に兄さんに認めてもらわなくても……」
「そもそもやっぱおかしいだろ?何でそんな有名なところの副社長がお前を恋人にすんだよ。コイツに騙されてんじゃねえの?」
「騙されてない。知りもしないのに勝手なこと言わないで」
「オレはお前のこと思って言ってんだぞ!?女子大生とヤリたいだけのおっさんが副社長騙ってるだけだったらどうすんだよ」
「やめなさい冬弥。市ヶ谷さんに失礼だ」
怒鳴り始める兄さんに、ずっと静かにしていた父さんが低い声で叱責する。兄さんは舌打ちをしてそっぽを向いた。
母さんが焦ったように何度もハルさんへ頭を下げる。
「ごめんなさい市ヶ谷さん。冬弥は可愛がってた妹に彼氏ができて拗ねてるだけなの。本当にごめんなさい」
「いえ、お気になさらず」
「冬弥!あんたも謝りなさい。夏怜だってもう二十歳なんだし、いい加減妹離れしなさい」
両親二人共に咎められるも、兄さんはなおもハルさんを睨む。



