ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。

◇◆◇


 直島呉服店は、店の奥と二階が住居になっている。

 その中の一室で、私とハルさんは私の家族と向かい合っていた。


「ええと。こちら、今お付き合いしている市ヶ谷晴仁さんです」


 早く紹介しろという家族からの視線に耐えかねた私は、腹をくくって向いにいる三人へ言う。
 次にハルさんに目を向けた。


「ハルさん。見たらわかるかと思いますけど、右から母さん、父さん、シスコンです」

「待ちやがれ夏怜。誰がシスコンだ⁉」


 あんたしかおるまい。
 シスコンもとい兄さんが素っ頓狂な声を上げ、隣の父さんが渋い顔をする。ざまあ見やがれ。


「ええと、市ヶ谷さん?娘がお世話になっているようで。さっき冬弥から聞きましたけど、夏怜と恋人同士というのは本当なのね?」


 母さんが興味津々といった様子で、軽く身を乗り出しながら尋ねた。

 ハルさんはまたふわりとした笑みを浮かべ、手土産を机に置きながら「はい」と言う。


「市ヶ谷晴仁と申します。夏怜さんが冬休みを利用して帰省するということでしたので、僕もぜひご挨拶させてもらいたいと思って同行させてもらいました。……あ、つまらない物ですがこれ良ければ」

「まあ!チョコレートだわ!ここのブランドのやつ本当に高いのよね……。ありがとうございます」


 チョコレートを受け取り、母さんは嬉しそうに笑った。
 そして、何も話さない父さんの代わりにハルさんに質問し始める。


「失礼だけど、市ヶ谷さんはおいくつなのかしら?」

「三十一です」

「あら、思ったよりも年上だわ。冬弥よりも上じゃない。お仕事は何を?」

「ジュエリーブランドの副社長をしています。一応、こちらが名刺です」

「副社長?すごいわね。へえ……」