私はもう一度ため息をついて歩き出す。駅から家まで。何回も何回も通ってきた道だ。
それなのに、今日はどこか慣れない感じがある。久しぶりの帰省だからだろうか。……いや、違う。
「夏怜ちゃん、手繋いでもいい?」
にこやかにそう尋ねてくるハルさんが隣にいるから、妙に新鮮な感じがあるのだ。
私は小さくうなずいて手を差し出した。冷えてかじかんでいる私の手を、彼の大きくてしなやかな手が絡めとるようにして握る。そして、私の手を握ったままその手を自分の上着のポケットへ入れた。
「夏怜ちゃんの手、結構冷えてるね。こうしたら少しはあったかい?」
「はい。……あ、私の手が冷たくなってるのを気にしてくれているなら大丈夫ですよ。バッグの中に手袋がありますから」
「違う違う。ただ手を繋ぎたいだけ」
「そうですか……」
おかしい。寒いはずなのに、繋いだ手からどんどん熱くなっていくような気がする。
きゅっと指先に力を込めてみると、同じくらいの力で握り返される。
「この道をまっすぐ進んで、二番目の信号を右、しばらく歩いていたら見えてくるクリーニング屋さんを左に曲がったあたりからが商店街です」
私は自由な方の手で道を指しながら歩く。そのうちに、少しいつもと違うことに気が付く。
何だか静かだ。いつもよりハルさんの口数が少ない。
「もしかして、緊張してます?」
そう聞いたのは半分冗談だったが、彼は素直にうなずいた。
「はは、ばれた?もしや手汗かいてる?」
「いえ、それは大丈夫です。あんまりしゃべらないなと思っただけなので」
「ああ……ご家族に会ったらまず何て言おうかずっと考えてて」



