「…これ、外してよ」

「やだね」

即答で返すことはないのでは?

腕の拘束ぐらい解けよ。

なんて文句は言わずにそのまま彼を見つめる。

というより睨むの方が正しいのかもしれないが。

まぁそんなことはどうでもいいんだ。

わかった。

この鹿…絶対ドSだろ。

絶対そうだ、この姿の僕も見てニタニタと笑ってやがる。

「まぁ、いいや。外してあげるよ」

そう言って彼は僕の腕に手を伸ばす。

少しホッと安心した。

しかし彼のSはまだ終わっていなかった。

今度は噛み跡にぐっと爪を突き立てた。

「いっ…!?」

少し顔を顰めてしまった。

また彼はクスクスと笑う。

「馬鹿な子だなぁ…
 すぐに解いたら面白くないじゃん?」

そのまままた、つつ、と僕のお腹をなぞる。

その感覚に慣れてなくてビクン、と身体が飛び跳ねてしまう。

その反応を見た彼は面白いものでも見つけたかのように目を細める。

また彼は僕の上に馬乗りになる。

今度は首に噛み付くんじゃなくて、
優しくなぞる。

くすぐったくて少し声が出てしまう。

それが恥ずかしくて目を瞑ってそっぽを向く。

すると、グイ、と顔の向きを戻されてしまう。

「君、こういうの敏感なタイプ?」

首を変に触りながら彼は聞く。

もう一回キッ、と睨んでやった。

しかしやはり彼には無効。

上から退いてくれるわけもなく、
まだ僕に触れている。

しかしずっと無表情な僕に腹が立ったのか、彼は拘束を解いて上から退いた。

「…腹の傷はまだ閉じてないからしばらく安静」

そう言って彼は部屋から出ていった。

一体何がしたかったのだろう。

しかし疲れ切った僕の体はそのまま眠りに落ちていってしまった。