腹を見れば赤く染まっていく服。

青年を落とさぬ様にしたもの、

力が抜けて、ドサリと落としてしまう。

そのまま木にもたれかかる。

口からも咳と一緒にぼたぼた血が溢れる。

痛い、苦しい、ただそれだけが脳内に回る。

冷静なんか犬に食わせた。

そう言うレベルだ。

ゆっくりと腹をみる。

そこには、鹿の角、の様なものが刺さっていた。

多分、折れてしまったツノを投げたのだろう。

かなり奥深く刺さっている。

コツン、コツン、と近づいてくる足音に僕はなす術なく、座り込む。

足音は僕の前で停止して座り込む。

顔を上げれば綺麗なエメラルドの瞳。

けどその瞳には溢れんばかりの憎悪。

恐怖、怒り、悲しみ…。

その全てが詰まったかの様などす黒い瞳だった。

あぁ、僕を刺したのは彼か。

僕はすぐに直感した。

死体の彼は鹿の獣人、

そして目の前の彼も鹿の獣人。

つまり、僕が彼を殺したと思ってるのだろう。

まぁこのまま死ねるなら本望。

元々、死んだはずの命なんだ。 

いつ死のうが結果は変わらないだろう。

何故かはわからなかったが、自然に笑みが溢れて

目の前の彼に向けて微笑んだ。


目が覚めたのはそれから数日という時間が経った後だった。