「…君ってさ、ダメ人間だよね」

彼ははっきりそう言った。

けれど、行動が一致していない。

僕の事を優しく撫でているんだ。

何故、その言葉を言う前に彼は口を開く。

「…人の為に怒れる人はね、自分の事をどうでも良いと思ってるんだよ」

つまり、そう言葉を一度区切ってまた話す。

「優しすぎるんだよ、君」

悲しそうに微笑んだ彼からは、
少し柔らかい匂いがした。

初めて僕は誰かを信じたいと思った。

ただ彼を、助けたいと、思っただけなんだ。

彼は緊張の糸が解けたのか、そのまま僕に倒れ込むようにして寝てしまった。

流石に起こそうとは思わないので、僕が寝ていたベッドに寝かせて布団を被せる。

その間にカチャ、とドアを開けてこの部屋から出て行った。

どうやら普通のアパートのようで、
まぁまぁな広さがあった。

少し外が気になったもので窓を覗く。

また、意外なものが見えた。

どうやらここは大きな木の幹の中の様だった。

他にも部屋が複数あって、1番下は商店街の様になっている。

どうしたらこんな構造になるんだ。

そんな疑問を抱きながら
窓の外を見るのをやめる。

一応彼に助けてもらった身ではあるので、
何か少しぐらいお礼となるものをしなければ。

近くにキッチンがある。

リビングとおもわしき場所は、散らかっていて
とても先程の部屋と同じとは思えない。

茶色のローテーブルの上にはカップラーメン
らしきものが散乱しており、空き缶が床に転がっている。

拾って見るとそれは缶ビールの様でかなりの量が転がっていた。

それに少し腐臭もする。

そりゃああんな世界で正気を保っていられるわけが無い。

少し片付けよう。

転がっている缶ビールを大きなビニール袋に入れて、カップラーメンのゴミも捨てていく。

キッチンの流しに積み上げられた食器を洗って乾かす。

その間に雑巾で床を水拭きして、すぐに乾拭きしていく。

端っこの方なんか凄く汚れている。

黒ずみがかなりある。

この雑巾はとりあえず洗面所に置いておいて、
散乱した服を丁寧に畳んで、汚れていたものは洗濯機に放り込む。

壊れている物はとりあえず破片を集めて捨て、転がっているだけの物は丁寧に整頓していく。

埃をかぶってしまっている物は先程とは違う雑巾で丁寧に拭く。

洗面所に戻り、雑巾は洗面台に置いて、洗濯機を回す。

その間に雑巾を手洗いしてベランダに干しに行く。

まだ洗濯機は終わらなそうなので乾かしておいた食器を棚に仕舞い始める。

まだ乾いていない食器はふきんで拭く。

そのあとテーブルを濡れた布巾で拭いて、
アルコールで除菌。

洗濯機から服を出してベランダに丁寧に干していく。

かなり綺麗になったと思う。