やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


 *

 予定よりちょっと遅れて会議が終わった。

 私は部下にお小言マシンガンを浴びせる三浦部長を少し離れたところから眺める。

 彼は不機嫌そうな顔を隠そうともしなかった。傍目にもいい話をしているようには見えない。どうやら新規開拓の進み具合の悪さを三浦部長が指摘しているようだった。

 うちの会社は国内外に支社があり、私や三浦部長は本社に勤めている。基本的にはそれぞれに担当エリアがあり、本社は南関東のほとんどを受け持っていた。

 通常、一度海外赴任(主にニューヨーク支社)を経て第一事業部に戻ると出世コースとしてはかなり有利となる。国内と海外の橋渡し感の強い海外事業部は海外赴任の足がかりとも呼ばれていて将来の重役候補者は必ずと言っていいほどこの部署を経験していた。