やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「私、もうちょっと持ちます」
「いや、大丈夫だから」
「でも私、手ぶらでみんなのところに行きたくないです」

 訴えるように彼を見つめた。

 一瞬、彼の頬に朱が走ったように感じる。でもそれはきっと部下に面倒なことを言われて気分を害したからだろう。

 口角を下げて三浦部長が四分の一ほどを渡してきた。このくらいでも少ないのだがこれ以上は我が儘になるのかもしれない。

「ありがとうございます」
「気にするな」

 彼の血色が濃くなる。ぷいと私から顔を背けるとずんずんと歩きだした。