やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「それと」

 部長の腕が伸びて私が抱えていたプリントアウトの束を奪っていく。抵抗の暇も与えず、それでいて優しく持って行った彼の動きはスマートでどこか私のことを大切に扱ってくれているような錯覚をしてしまった。

 無意識のうちに胸がときめいていく。

 あ、私は彼のことが大好きなんだなと再認識した。

 「これ、会議室まで運べばいいんだよな」
「はい……って、わぁ、駄目ですよ。部長にこんなことさせたら私がみんなに白い目で見られます」
「うん? 僕には資料運びすらさせてもらえないのか?」
「そうじゃありませんけど」

 きょとんとする部長に私はため息をついた。