やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 もう一度言った。

「新村くんとは食事しただけです」

 はっと優子さんの目が見開かれた。

 再び私と目が合う。

 小さく苦笑いした優子さんが言葉を接いだ。

「相手は新村くんよ。それはないわ」
「えっ」

 私は驚いて声を発してしまう。優子さんの言葉の意味が単純なものではないような錯覚をした。そのくらい含みのあるセリフだった。

「あのね」

 優子さんが壁ドンをやめる。

「私、うすうすわかっていたのよ。新村くんっていろんな女の子に手を出していたけどまーちゃんにだけは軽々しく手を出さなかった。本気の相手だからこそ不用意な真似をしたくなかったのね」
「そ、そういうものなんですか?」