やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「私のお膳立てを無駄にしてないよね?」
「……」

 いや無駄も何も、私、頼んでないし。

 ブレーキの壊れたダンプカー(だっけ?)の異名を持つ優子さんが問答無用で食事をセッティングしたのだ。そのせいで三浦部長へのお弁当を作る練習ができず本番に至らざるを得なくなったというのに……私、怒ってもいいのかな?

 優子さんが問い詰める。

「どうなの? 大人しく白状しなさい」
「あ、えーとですね」

 たぶん私の目は泳いでいるだろう。

 それはもう競泳だってできるレベルで。

「あなたの返答次第で新村くんへのペナルティもあり得るんだからね。もしまーちゃんを泣かせるようなことをしたら……」
「ゆ、優子さん?」

 途中で言葉を切った彼女から笑みが消える。表情は笑ってないのに小さな笑声が漏れた。