やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 でも、まだどこかで「これはみんなに言っているセリフでは?」と疑っているのも事実だ。

 何しろ彼はモテモテなイケメンである。彼が誰と付き合ったとか誰と火遊びしたのかとかいろいろ噂は絶えない。もちろん他の社員からのやっかみや嫌がらせで広まったものもあるだろう。

 それでもいくつかある事実が私の中に疑念を植え付けていた。

 私は彼から視線を外す。

 下手に目を会わせていたら疑念を抱えたまま彼に流されてしまいそうだった。そうなったら私の負けだ。

 一度深呼吸して気持ちを整理してから私は言った。

「ごめんなさい。私、好きな人がいるの。だから新村くんとは無理」

 彼には「自分とは付き合えない」とはっきり伝えるべきだと思った。

 一瞬、彼の表情が固まる。

 脱力したかのように彼は肩を落とした。わかりやすいくらい落胆していた。