やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 私は新村くんより小さくハンバーグを切る。チーズとお肉とデミグラスソースを絡めて口に入れた。じゅわっとソースと肉汁がチーズの風味と重なって口内に広がっていく。

 あ、ここは当たりだ。

 優子さんの行きつけの店なのだしハズレなはずはないのだが、自分の舌で確認できた。と同時にこんな店の予約をさらっとできる彼女への敬意が芽生えてくる。私もいつか彼女みたいになれるのだろうか。

 ナイフとフォークを動かす手を止めずに新村くんが言葉を接ぐ。

「真面目な話、今度俺と一緒に食べに行かない? 絶対に大野さんの期待を裏切らないからさ」
「えっ、でも」

 昨夜断ったつもりでいたので私は少し戸惑う。手が止まった私に追い打ちをかけるように新村くんが続けた。