やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 本当は早く帰って三浦部長のお弁当のために練習をしたかった。彼におかしなものを食べさせたくない。だが優子さんのおせっか……親切を無下にする訳にもいかなかった。彼女とはまだ仲良くしていたい。

「いやいや、大野さんは俺にとって特別だし」

 どこまで本気なのか、新村くんは笑みを絶やさない。

 いい人だとは思うけど彼の女性遍歴は私もよく知っていた。その一人に加わるつもりはない。

 ワインで乾杯をすると彼はおもむろに尋ねてきた。

「大野さんはどんな子供だったの?」
「えっ」

 想定外の質問に私は短く驚く。瞬間的に小学生の自分が頭に浮かんだ。