やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「ごめんね、早見さん強引だから」

 テーブルの向こうで新村くんが眉を下げる。

 終業後、私たちは会社の最寄り駅から二つ離れた駅の傍にあるハンバーグレストランに来ていた。私が新村くんのことを好きだと誤解した優子さんはすぐさま二人の親密度を上げるべくご飯のセッティングをしたのである。

 このハンバーグレストランは優子さんの行きつけの一つだった。突然の予約もすんなり通るくらい彼女はここの常連なのだ。

「でも嬉しいな、大野さんと食事かぁ」

 新村くんがにこりとする。細い目がさらに細くなった。

「そんなにうれしがるほどのことじゃないよ」

 私は曖昧に笑いながら返した。