やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「やっほー、たっちゃんいる?」

 ショートヘアの女性がにこやかに部内に入ってくる。淡い色のスーツが似合う綺麗な人だ。どこかエキゾチックな顔立ちはハーフを連想させるが本人曰く生粋の熱海人らしい。

 彼女……早見優子はデスクでお昼にしている私に気づいたのかこちらに近づいて来た。

「まーちゃん、たっちゃんは?」
「朝からずっと会議ですよ」

 ちなみにたっちゃんとは三浦部長の下の名前(拓也)から来ている。

 私はさりげなくお弁当をファイルの下に隠した。このファイルは午後の打ち合わせに使うのだけれど匂いが移ったりしないよね?

「部長に何かご用ですか」