やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 私は内心動揺するが表情に出ないよう努める。

「そ、そうなの。唐揚げとか最高」
「そういえば社食でよく唐揚げセット食べてるよね。そっかぁ、大野さんの好物は鶏肉かぁ」
「そうそう」

 何だか引っ込みがつかなくなって半ばヤケになりつつ首肯する。新村くんが「なるほどなるほど」と口にしながら何やら考え始めた。

 数秒ほど間があり、新村くんが「あのさ」と真面目な口調で切り出してくる。

「俺の知ってるところで良ければ今度一緒に行かない? 鶏肉なら何軒かいい店があるんだ」
「えっ?」
「大野さんは和食と洋食のどっちがいい?」
「えっ? えっ?」

 私がびっくりしながら疑問符を増やしていると新村くんがさらに訊いてくる。