やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 第二事業部に頻繁に顔を出すのは彼の上司で人事課課長の早見優子(はやみ・ゆうこ)さんだがそれと同じくらいの確率で私は新村くんと顔を合わせていた。

 でも社外で会うのはこれが初めてだ。

「会社から帰って夕食にしようと思ったら豚肉がなくてね。買いに来たんだ」
「……」

 へぇ。

 新村くんって自分で料理するんだ。

 女の子に作ってもらってるんじゃないんだ。。

「大野さんは鶏肉にするんだね」

 新村くんが私の横に立ち陳列された鶏肉のパックを一つ手にする。滑らかな動作で彼は自分の買い物カゴへと放った。

 えっ、豚肉じゃなくていいの?

 疑問符を浮かべた私に彼はスマイルを向ける。元スポーツマンらしい爽やかな笑顔だ。これに惹かれた女子はどのくらいいるのだろう。

 いつもむすっとしている三浦部長とはタイプを異にするイケメンである。