やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 少しでもハードルを下げたくて私はおずおずと付け足した。

「あ、あんまり期待しないでくださいね。三つ星レストランのシェフみたいなものは無理ですから」
「いや、そこまでは望んでない」
「あと胃腸の状態を万全にしておいてください。私の料理を食べたから腹を下したなんて言われたらたまったものではありませんし」
「おいおい、おかしなものはやめてくれよ。最低でも食べられるものを頼むぞ」

 三浦部長がはははと笑った。

 やけに力のない笑い声だったのと顔が引きつっていたのは無視したほうがいいのかな?

 腑に落ちないながらもどんな料理にしようかと考える私に「まゆかの手料理楽しみだなぁ。不安がなくもないけど楽しみだなぁ」とつぶやく三浦部長の声は届かなかった。