やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「大野?」

 無造作にナスを口に放り込んだ私に三浦部長が目を丸くする。私の食べ方はそのくらい大胆に映ったようだ。

 でも私はそれどころではなかった。

 好き、という言葉が頭の中でぐるぐる回っている。その回転の摩擦で熱が生じているみたいに体温がさらに上がった。熱っぽさと鼓動を激しくする心臓のせいで倒れてしまいそうだ。

 えーっ、どうしよう。

 あまりのことに軽い目眩を覚える。

 これは悪い夢?

 それとも病気か何か?

 くらくらとしつつも心の隅のほうで「まだ部長にちゃんと返事してない」とせっついてくる私がいた。そういえば料理を作ってくれと言われていたんだっけ。

「えと、あの、部長」

 ナスを飲み下した後で喉から絞り出した声は弱々しくて、自分らしさが微塵もない。けれど今はこれが限界だった。