やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「わがままなまゆかも可愛いんだけどなぁ。うーん、でも公私混同は良くないし」

 部長がまた小声で何か言っている。きっと私のことだ。

 もう、二人っきりなんだからはっきり言ってくれたらいいのに。

 どうせ好意なんでしょ?

 うん、私もあなたが好き。

 何かを決心したように部長が「よし」と呟く。

 私はちらと彼を見た。

 彼が私を見てる。

 無視していると「まゆか」と私の名を呼んだ。それだけで私の胸の鼓動が一段跳ねる。

 普段、社内だと私のこと名字で呼ぶ癖に。

「機嫌直してくれないか。代わりに美味い鶏肉の店に連れて行くから」
「……約束ですよ」
「まあ、昨夜もメッセージで約束しているしな。二言はないから安心しろ」