やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「やった。エレベーターじゃなくて階段にして正解だった。うん、朝からまゆかに会えるなんて超ラッキー。これで今日も一日頑張れる」
「……」

 わぁ、朝っぱらから部長の悪癖だ。

 その声は小さすぎて私にはよく聞こえない。

 けど、これいつもの悪癖だよね?

 私はにこりとして見せた。大丈夫、自然な笑みになっているはず。

「部長、おはようございます」
「ああ、おはよう」

 三浦部長がそう返しながら踊り場まで登ってきた。

 高身長の彼は黙っているとかなりの威圧感を持つ。以前の私なら避けたいと思っただろう。それが何だか懐かしい。

 私は視線を上げた。

 ちょっと恥ずかしそうに視線を逸らしているけど、私が見つめているのに気づいていないふりをしているけど彼の好意が伝わってきてつい嬉しくなってしまう。

 ああ、私って彼に溺愛されているんだな。

 再認識した私はニヤニヤが止まらなくなる。