やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

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 幸せ気分で中森さんと飲んでいたら少し飲み過ぎたらしい。

 翌朝は二日酔いの頭痛に堪えつつ出社した。辛そうな私を気遣ってくれた老齢の守衛さんは優しいと思う。

 いつものようにエレベーターではなく会談で上に向かった。私の勤務する第二事業部は八階にある。

 途中の踊り場で今日くらいはエレベーターにするべきだったかなと私が後悔していると背後から声をかけられた。

「大野」

 聞き慣れていても不意打ちを食らった私の心臓がどきりと跳ねる。声も出せずに振り返った私の視界に三浦部長がいた。