やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「今回の一件、あいつにはあいつの仁義があって動いたんだろうから俺はそれを尊重する。お前さんは武田の側かもしれねぇがそれはそれだ。俺にだって人情はあるんだぜ」
「はあ」
「というかよくあの嬢ちゃんを手名付けたな。大したもんだぜ。どうだ? 俺の側につかねぇか? 悪いようにはしねぇぞ」

 ぞわり。

 反射的に悪寒が走った。

 わぁ、やだやだやだやだ。

 こんな人の下につくなんてあり得ない。

 あっ、でもこのタヌキおじさん副社長なんだよね。

 うーん、この会社大丈夫かなぁ。

 いくら懐が深いといっても限度があるんじゃない?

「親父……副社長、戯れはそのくらいにしてもらえますか。彼女まで権力争いに巻き込もうというのなら俺は降りますよ」

 北沢先輩の声が冷たい。