やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「あの、常務実は……」
「はいはい、お邪魔するよ」

 既視感にも似た感覚に襲われながら私は現れた北沢副社長を見つめる。そしてすぐに彼の隣にもう一人いるのを認めた。

 思わず「あっ」と声が漏れる。

 そして驚いたのは私だけではなかった。三浦部長もだった。

「北沢くん……」
「お久しぶりです、三浦部長」

 やや挑発的な笑みを広げて北沢先輩が三浦部長に挨拶する。彼は同じように武田常務に挨拶すると北沢副社長を横目で見た。

「俺の父親が迷惑かけたみたいですみません」
「父親?」

 私の疑問は悲鳴にも近いものになった。