やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 頭を上げた三浦部長が言った。

「やはり福岡から彼が戻ってくるんですね。ただ、副社長は長谷部の一件でミソがついたと思っていたんですが」
「おや、そんなことで取締役会が北沢副社長の意向をはね除けると? 彼の発言力はまだまだ有効だよ。だいいち彼はそんなヤワな男ではないからね」

 私の想像の中で北沢副社長がにいっと笑う。ヤの字な人だが中森さんから話を聞いたせいか前ほど嫌悪感は沸かなかった。

 そっかぁ、あのタヌキおじさんしぶといのかぁ。

 となると、この先何かあればまた絡んでくるんだろうなぁ。

 近い将来再び北沢副社長と相対するのかもしれないと私は軽い目眩を覚えた。なぜかその予感は当たりそうな気がしてならない。

 そのせいだろうかコンコンとノックする音に続いて武田常務の秘書が入室してきた。彼女は前に会ったときのように戸惑った表情をしている。