やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「どうしてあたしが北沢副社長の意向に逆らうようなことをしないといけないの。あんた馬鹿じゃない? 胸だけでなく頭も残念だなんて可哀想に」
「……」

 え。

 そこまで言われるの?

 ちょっと酷くない?

 そりゃ、中森さんに比べたら私の胸はぺったんだけど。

「でも、どこかの義理堅い人が手を回してくれたんでしょうね」

 ふっ、と中森さんが笑む。

「その人にはその人の仁義があるのよ。だから表立ったことは出来ない。そのあたりは理解して欲しいわね」
「あ、うん」

 そっか。

 中森さんにも事情はあるもんね。

 私は少し芽生えた怒りをごまかすように紅茶に口をつける。

 ふわっと口内に広がる紅茶の味が気持ちを鎮めてくれるような気がした。