やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 店内に流れるBGMと相まってその姿がとても優雅に見えた。けれどそれは単なる優雅さではない。そこはかとなく危険な雰囲気を孕んだ優雅さだ。

 ま、中森さん自体がレディースで極道な女で目デューサな人だもんね。

 怖い怖い。

 などと思っていると中森さんが睨んできた。

「あんた、失礼なこと考えてない?」
「そ、そんなことないよ」

 私は慌てて首を振った。

 あわわ、妙なところで鋭いなぁ。

「ま、いいわ。とにかくこれで借りは返したわよ」
「えっ」
「あんたと三浦部長をくっつけて新村くんの目を醒まさせようって気持ちには変わりないけど、以前酔っ払った福西(ネズミおじさんのこと)に絡まれていたあたしを助けてくれたでしょ? あと、家に帰れなくなったあたしを止めてくれた。借りっぱなしって結構気持ち悪いのよね」
「そんな、貸しだなんて思ってないよ」
「あんたがそうでもあたしは気になるの」

 中森さんの目つきがさらに鋭くなった。