やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「そ、それで? 経理課に何の用かな?」
「えっと、中森さんに会いに来ました」
「あ、うん。中森くんね」

 表情を全く崩さずに柱谷課長が無人のデスクへと顔を向ける。きちんと片づけられたそこは何となく中森さんの性格が表れているかのようだった。

 私は尋ねた。

「不在ですか?」
「不在だねぇ。まあ、まだ出社してないだけなんだけど」

 男性アイドルみたいな声が妙に寂しげだ。

 うーん、中森さんいないのかぁ。

 お礼を言いたかったんだけどな。

 私が残念に思っていると柱谷課長が操作を終えたのかスマホをポケットに仕舞った。ニコニコ笑顔のまま小さく息をつく。

 まるでミッションを一つクリアしたかのようだ。