やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


 *

 優子さんが帰ってから私は経理課に行った。

「やあ、大野くん」

 フロアに入ると可愛い系イケメンの柱谷課長が立ち上がって出迎えてくれる。彼はニコニコとしながら手に持っていたスマホを後ろ手に隠した。

「ん? 柱谷課長、今何か隠しませんでした?」
「あははーっ、何のことかな」
「……」

 手を後ろに回したまま柱谷課長が何かをしている。微かに聞こえるのはスマホを高速でタップする音だ。

 これ、スマホを操作してるんだよね?

 わぁ、器用だなぁ。

 などと感心してみたり。