やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


「この動画のせいで早朝から上層部が大騒ぎよ。緊急の取締役会議が行われてすぐに長谷部の異動が無くなっちゃったわ。同時に彼への辞職勧告が……」
「そしたら三浦部長の処分もなくなりますよね?」

 途中で話を遮って私は前のめりになった。

 朝の電話のことなんてどこかに吹っ飛んでいる。

 私に気圧されてか優子さんが一瞬怯んだ。一歩だけ後ずさりした彼女はやや頬を引きつらせて答える。

「え、えーと。処分うんぬんはまだわからないけど当面はたっちゃんの異動はないと思うよ」
「ヨツビシの件はどうにかなりましたよ。だから私と三浦部長の処分はなしにならないとおかしいです」
「それを私に言われてもねぇ」
「優子さん、人事課長なんですから何とかしてくださいよ」
「ええっ」

 優子さんが批難めいた声を発する。