やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 閉館時間を報せるアナウンスを背に私たちは商業施設を出た。

 ぴゅうと吹いた北風が容赦なく私を凍えさせる。やっぱりこの安物のコートでは冬を越せそうにない。

 震えながらも都合良く青信号になった横断歩道を渡って向かいの喫茶店に逃げ込むように入った。通りに面したテーブルに白黒のチェック模様の制服を着た店員に案内されて座る。

 暖かな空気にじんわりと身体が温められるようで思わずほっとした。

 北欧を連想させるBGMが流れる店内は暖色系の照明と茶色っぽい壁やテーブルでどこか古めかしい雰囲気を醸し出している。客はほどほどにいて比較的若い人が目立つ。