やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 妙に圧があったので私はこくこくと首を縦に振る。というかそうしないと石にされてしまいそうだった。。

 茶髪は蛇になってないけど油断できないからなあ。

「あたしの父もカドベニの社員だったの」

 中森さんが私から目を逸らして言った。

 私が応えずにいると彼女はふっと自嘲気味に笑い、虚空に話しかけるように続ける。

「父は北沢副社長側の人間だったわ。その父が事故で死んだとき私は高校生だった」

 中森さんはそこで言葉を切り、数秒ほど中空を見遣った。自分の口にしたことを確認するかのようにうなずきを繰り返すと彼女はまた言葉を接ぐ。