やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 私は顔に出していたのだろう。中森さんがクスリと笑った。

「そんなに怖がらなくても大丈夫よ。必要以上に探ったりしないから」
「そ、そうだよね……あはは」
「必要なときは徹底的にいくけどね」
「……」

 いや、そこで声を低めないで。

 怖すぎるからやめて。

 内心で震えていると中森さんが話を進めた。

「あんたにとって北沢副社長は悪い人。そういう認識でいいわね?」
「うん」
「まあ、そう思われても仕方ないのよねぇ」

 中森さんが嘆息した。

 白い息がふわっと広がり空気に溶けていく。中森さんはまた一つうなずくと私の目をじいっと見つめてきた。

「え、何?」
「今から話すことは他言無用よ。いいわね?」
「あ、うん」