やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


 *

 おソバ屋さんを出たときには月に雲がかかっていた。

 料理と少しのアルコールで暖まった身体に冷たい外気が心地良い。

「ちょっといい?」

 みんなで駅に向かおうとしたとき中森さんが私を呼び止めた。

 ん?

 何かな?

 私は彼女と並んだ。他のみんなは先を歩いて行く。

 いや、新村くんは私と一緒にいたかったみたいなんだけどね。

 優子さんが引っ張って行っちゃったんだよなぁ。

「あなた北沢副社長のことどう思う?」

 二人きりになると中森さんが訊いてきた。