やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 彼女はちょっと面倒臭そうな顔をしている。いつの間にか茶色い蛇たちも細かなウェーブの髪に戻っていた。

 うーん、と中森さんは一つ唸り少し困ったように眉をハの字にする。

「あのー何か誤解されてるようですけどあたしそんなに力とかないですよ。あたしはただの経理。ドラマじゃあるまいし、特殊な任務に就いていたり裏課業をしていたりなんてしていませんよ」
「……」

 あれ?

 中森さん、どうしてそんなに焦っているのかな?

 それにちょい冷や汗かいてるよね?

「……」

 ……え。

 そうなの?

 会社の経理って、もしかして表の顔?

 私、実はとっても頼れる人とお友だちになっていたとか?