やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


 三浦部長ではなく少し先の宝飾店に目を向ける。特にその店に興味がある訳ではない。彼の顔を見られないだけだ。

 ふう、と三浦部長がため息をついた。

「もしかして疲れたのか。仕方ない奴だな」

 数秒の間があり、すまなそうに続けた。

「とはいえ、仕事帰りに付き合わせてしまったからな。君の都合も考えるべきだった」
「……」

 どうしよう。

 今、部長の気遣いが嬉しいとか思っちゃった。

 拒みたいのに気持ちがこみ上げてくる。

 認めない、認めたくないと思っているのに胸の奥から想いがせり上がってくる。うっかり気を抜いたら言葉にしてしまいそうな勢いだ。

 相手は三浦部長なのに。

「あれだな、どこかで休んでいくか」

 身体の中でとくとくとくとくと大音量で鳴っている私には「いっそこのままお持ち帰りしてしまいたい」と付け加えた三浦部長の声は聞こえなかった。