やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 数秒その場にいた全員が黙った。そういやこういう間を「天使が通った」とか言うんだよなぁとか思っているとコホンと三浦部長が咳払いした。

 ややばつが悪そうに顔を赤らめながら彼は尋ねる。

「で、その長谷部とはどんな奴なんだ?」
「あ、はい。そうですね、あくまで私の印象ですが彼のような上司がいたら部下は苦労するでしょうね。指示は気まぐれだし、手柄は独り占めするし、自分のミスをカバーさせる癖に他人のミスは知らんぷりするし……それでも表向きは会社に貢献していることになっているので上層部の受けはいいんです。まあぶっちゃけクズなんですけどね。おまけに女癖も悪くてかなりの人数を泣かせているとか。集英商事にいられなくなったのもそれが原因らしいですよ。まあ、表向きはうちの会社の引き抜きってことになってますけどね」
「……」

 ワォ。

 何そのいかにも後でざまぁされますって感じの人。

 そんなのが三浦部長の後任になるなんて嫌だなあ。