やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


 *

「で、どうして中森さんも一緒なの?」

 会社から歩いて五分くらいにあるおソバ屋さんに私たちは来ていた。

 お店の座敷に案内されたのは私と三浦部長、優子さん、そして途中で合流した新村くんとなぜかついて来た中森さんの五人。人数も増えたので喫茶店で話すのをやめて近所のおソバ屋さんで座敷を借りることにした。

「あによ、あたしが居たら困ることでもあるの?」

 目を吊り上げて中森さんが睨んでくる。細かくウェーブした茶髪が一瞬で茶色い蛇たちに変化した。

 どの蛇も私に「シャーッ!」と威嚇してくる。

 ああ、レディースとか極道の女に思えた頃が懐かしい。

「聖子、俺たちはこれから大事な話をしないといけないんだ。部外者には聞かせられないんだよ」

 新村くんが外でも言っていたセリフを繰り返す。いつもはにこやかな新村くんなのに少しだけ表情が硬かった。真面目な話をしようとしているからかな?