やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


 *

 優子さんが第二事業部に現れたのはそろそろ終業時刻という時間だった。

「わぁ、すごーく疲れた」

 優子さんはまっすぐ三浦部長のデスクへと向かう。カチャカチャとキーを叩いている部長が彼女をスルーしていると何の躊躇いもなく後ろから抱きついた。

「たっちゃん、癒して」
「こら、くっついてくるな」
「ええっ」
「それに疲れているなら自分の部署に帰れ。ここは休憩所じゃないぞ」
「ひどっ、たっちゃんもうちょっと私に優しくしてくれたっていいんじゃない?」
「僕の彼女みたいなこと言うな。誤解されたらどうするんだ」
「誰が誤解するのよぉ」

 その様子は他の人が見たら微笑ましいカップルに見えたかもしれない。けれど私にはそう見えなかった。