やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「マフラーとコートね。じゃあ俺はもっといいものを選ばないとな」

 新村君が妙に真剣な声でそんなことをつぶやく。いや、これすんごい高いよ? 無理しなくていいんだよ?

 じゃなくて。

「……だ」

 私と目を合わせないまま三浦部長が何か言った。その声は小さすぎて私にはよく聞こえない。

 聞き直していいのかな?

 そう私が思っていると部長の声が大きくなった。

「それは君のために買ったんだ。僕は君のことが好き……」
「すっごいあったかそうなコートだよね。マフラーもセンスいいし大野さんに似合いそう。そうだ、大野さん、それ着てみてよ」

 三浦部長の言葉に重ねるように新村くんが言ってくる。おかげで部長の言葉はほとんど聞こえなかった。