やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 数秒の沈黙が流れる。何だか気まずい。どこをどう気まずいか問われたら答えづらいけどとにかく気まずい。

「ま、いいです。あ、大野さん」

 新村くんがスマイルを貼り直した。

「俺も大野さんにプレゼントしなくちゃね。終業後に……あ」

 彼は終業後の予定を思い出したらしく苦く笑んだ。

「そういや話し合いをするんだった。うーん、誕生日の当日にデートを兼ねてプレゼントを買いに行くつもりだったんだけどなぁ」
「そ、そうだったんだ」

 本人の確認もなくちゃっかり予定を組んでいた新村くんに軽く呆れてしまう。強引というか何というか……こういうところ、新村くんだよなぁ。

「鶏肉の美味しいお店も見つけておいたんだよ。わぁ、どうしよう。そんなどころじゃないよね」
「うん」

 少々残酷だったものの私は首肯した。