やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 一度意識すると気持ちがどんどん膨らんでいく。

 自分の意思とは無関係に胸の鼓動が速まった。アップテンポにリズムを刻む心音が否応もなく私の体温も上げていく。

 すれ違う恋人たちの楽しげな声が自分の心音と重なる。

 私は自分が耳まで赤くなっているのを自覚した。すぐ隣の三浦部長にこれをどう隠せばいいのかわからない。

 それとも、もう気づかれているのか。

 半ば熱にうかされつつ性懲りもなく彼の手を見る。私の側にあるその手に自分の手が引き寄せられるような感じがした。ほんの少しだけ距離を詰めれば、あと数センチ手を伸ばせば……そんな想像が頭をよぎる。

 待て待て待て待て。

 落ち着け私。

 相手は三浦部長だよ。