やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 私、もしかしてとんでもなく部長を怒らせてる?

 頭の中でもう一人の私が「全力で謝れ!」と訴えていた。北沢副社長のときとは別種のやばさをビシビシと感じる。

 ぽそり、と三浦部長がつぶやいた。

「いっそ気づいてくれないかな」
「……」

 言っている意味がわからない。

 私が首を傾げていると三浦部長が短く息を吸った。ばっと顔を上げて私を見つめてくる。

 その目には何かの決意。

 私はつい吃驚して後ろに下がりかけたが真後ろにあった椅子に阻まれる。体勢を崩した私はそのまま椅子にストンと腰を落とした。背もたれがデスクにぶつかって音を立てる。

 三浦部長が私を見下ろした。

「大野、僕は君のことが……」
「大野さんっ、クビになるって本当?」

 何かを言いかけた三浦部長の声に重なるように新村くんの声が部内に響き渡った。